旅と撮影

東北地方の温泉天国はしごの旅

5月21日~24日、青森県、秋田県、岩手県を走り回ってきた。実は、今回の最大の目的は八幡平・鏡沼でこの時期にしか見ることができない「ドラゴン・アイ」を撮影することである。しかし、名湯のはしごや新緑の奥入瀬渓流、この時期しか見れない弘前城と岩木山のコラボなど、盛り沢山な撮影旅行であった。走行距離600km強。

21日、黄砂が日本を覆い天気も悪かったことから、予定を変更し青森空港から「ねぶたの家ワ・ラッセ」に向かった。

ねぶた(明かりを灯した巨大な灯籠)はすごい迫力だから見たほうがいいとのお勧めもあり立ち寄ったのだが、その大きさや人形の表情のすばらしさに圧倒されてしまった。

人形の表情をアップで撮影するだけで、迫力ある写真が出来上がってしまう。

 

つい先日、司馬遼太郎の「街道を行く-北のまほろば」をもとにNHKで放映された「新・街道を行く 北のまほろば」で紹介された「三内丸山遺跡」を訪れた。10年ほど前にも訪れたことがあるのだが、縄文時代定住しないと思っていた狩猟民族が集団でこの地に定住し長く栄えたその痕跡を復習するつもりで再訪した。

高床式の倉庫、巨大なやぐら跡など、今から想像もできないほどスケールが大きい建造物や、出土した芸術性の高い縄文土器や土偶などから、高い文化をもったこの地を司馬遼太郎が「まほろば」と言ったことに改めて思いを馳せることができた。遺跡内に群生しているタンポポの綿毛が、消えていった縄文文化に寄り添うように揺れていた。

その後、雨が降り出したためそのまま宿泊先の白神山地の麓の日本海に面した『黄金崎不老ふ死温泉』に向かった。夕陽を見ることはできなかったが、夕食後雨が上がったので、たまたまこの時期限定で照明を照らした波打ち際の露天風呂で、波音を聞きながら温泉を満喫できた。鉄分を含んだナトリウム塩化物強塩泉で赤褐色の温泉。

22日、白神山地・十二湖の鶏頭頭の池、青池、沸壺の池、ブナ自然林を1時間程度撮影をしながら散策した。美瑛の青い池に比べて透明度が高い。

この後、十二湖から八幡平・鏡沼の「ドラゴン・アイ」を目指し、3時間程度の長距離移動であった。今年は桜が2週間ほど早かったので、ドラゴン・アイも約2週間早くなると想定し、この時期に計画した。頂上付近の駐車場から約15分程度雪道を歩くと目の前に濁った深い深緑色の水を湛えた「ドラゴン・アイ」が現れた。残念ながら目の中心が解けておらず、時期的に少し早かったようだ。心残りは、晴天ではなかったので水面がエメラルド・ブルーにはならなかったことである。できればリベンジしたいという思いが募っている。

この日は、八幡平のふもと「馬で来て足駄で帰る後生掛」と言われる『後生掛温泉』に宿泊。温泉は後生掛大浴場のほか、オンドル、宿泊者専用ぶなの湯があり、単純硫黄泉である。時代を感じる天井が高く広々とした総木造の浴場は、肌触りが優しく旅の疲れを癒してくれる。

23日出発前に旅館のすぐそばの後生掛自然研究路を撮影しようと思っていたが、研究路の奥にある大泥火山や大湯沼あたりでクマの目撃情報があるうえ、歩いていると湯煙で前方が見えなくなることもあるので、クマ鈴を鳴らし恐る恐る途中の源泉「オナメ・モトメ」、紺屋地獄あたりまで散策し、ソソクサと引き返した。

この日は、天気の回復を期待して八幡平に再度向かったが、朝方は岩手山も雲で見ることができない状況だったので、予定を変更して弘前城に向かった。

弘前城は天守直下の石垣が外側に膨らむ「はらみ」の修理のために、岩木山が背景となる位置に天守が移設されている。工事は2025年までの予定で、以降は岩木山と天守のコラボを撮ることができなくなるので、お城好きの方はぜひ今のうちに。

本日の宿泊先である『蔦温泉旅館』に向かう。道中に総ヒバ造りの千人風呂の「酸ヶ湯温泉」があるので、まずは日帰り入浴で、160畳といわれる大きさの硫黄泉を体験することとした。

八甲田山を望めるあたりまでは晴れていたのだが、急に濃霧に覆われることとなった。道路の両側のブナ林の写真を撮るのには絶好の霧なのだが、撮影技術が伴わず大いに反省。

『蔦温泉旅館』は7年半ほど前に宿泊したことがあるのだが、ゆったりとした時間を過ごすことができた印象に残る温泉であったので、なんとしても再訪したかった。客室と食事処は改装されているが、外観や風呂は昔のままで、改めて懐かしく癒される時間を過ごすことができた。ここの風呂は源泉の上に浴槽があり、湯船の底板からぷくぷくと源泉が湧き出ており、硫酸塩・塩化物泉である。『東北の温泉天国はしごの旅』、歴史のある名湯で様々な泉質を楽しんだ旅になった。

最終日24日は、早朝の蔦沼と新緑のブナ原生林を撮影すべく「沼めぐりの小路」を散策した。蔦沼までは散策をする人がいたが、そこから先は一人なので、クマ鈴とスマホの音楽を鳴らし不安になりながら、鏡沼まで足を延ばした。

本日の撮影のメインは、奥入瀬渓流。7年半前に来たときは、珍しく台風が東北地方を太平洋側から日本海側に抜け、大きな被害を及ぼした直後だったので、濁流が流れており、残念な景観であった。今回は新緑のなかムラサキヤシオが咲いており、美しく流れる奥入瀬渓流の撮影を堪能することができた。

その後、時間があったので少し回り道をして、十和田湖畔を廻り、浅瀬石川ダム湖「虹の湖」の水没林を撮影し、その後ギネスに認定された世界最長の登り窯「永遠龍大窯」のある津軽烏城焼の窯元に立ち寄り、気に入った陶器を買って帰路についた。

谷岡 匠

谷岡 匠

大阪府箕面市在住

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